常用300万ボルトの世界最高加速電圧を持つ電子顕微鏡 (日立製作所 H-3000 型)は、 高電圧発生回路の安定化・電力損失の低減、対物レンズの応答速度の改善、負イオン除去装置の装備、 コンピュータ制御化された遠隔操作システムとオンライン画像処理システムの採用等の技術が盛り込まれて開発され、 物質・材料科学や医学・生物学の分野において、以下の特徴を活用して利用されています。
1. 電子の加速電圧の増大にともない試料透過能が高くなるため、厚い試料が観察できます。
2. 大きな試料室空間をもつため、種々の試料処理装置によるその場観察ができます。
3. 高エネルギー電子と物質との相互作用を積極的に利用して、格子欠陥の導入や、非平衡相創製の過程を研究できます。
高電圧発生源 | 対称型CW回路 | 35段 |
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タンク内電力消費 | 1kW以下 | |
加速電圧 | 標準加速電圧:3.0MV(300万ボルト) 中間標準電圧:0.5、1.0、1.5、2.0、2.5MV 最大加速電圧:3.5MV |
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高圧安定度 | 2X10-6/min以下 | |
電子銃と加速管 | 陰極 | 単結晶LaB6熱陰極 |
ビーム電流 | 最大20μA | |
加速管 | 22kV/段X138段(3MV) | |
絶縁ガス | SF6(4気圧) | |
照射レンズ系 | イオントラップ | 偏向コイルによる電子ビーム軸の移動 |
レンズ構成 | ダブルコンデンサレンズ | |
ビーム角 | 10-3以下 | |
結像レンズ系 | レンズ構成 | 6段レンズ系(像無回転) |
倍率 | 200~1,000,000(30ステップ切換) | |
電子回折のカメラ長 | 最大14m(6ステップ切換) | |
分解能 | 0.14nm | |
対物レンズ | 起磁力:最大23A/V1/2(3MV) 焦点距離:11mm以下 球面収差係数:10mm以下 色収差係数:10mm以下 離焦点量:最小5nm |
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試料室 | 試料装着 | トップ・サイドエントリー試料ホルダー共用 |
トップエントリーホルダーでの傾斜角 | ±30度(2軸) | |
サイドエントリーホルダーでの傾斜角 | ±45度(2軸) | |
試料微動距離 | ±1mm(機械式)±1.5μm(電気式) | |
試料ドリフト | 0.02nm/s以下 | |
真空度 | 5X10-6Pa(オイルフリー排気系) | |
カメラ室と観察室 | 電顕写真カメラ | イメージングプレート32枚X2カセット |
蛍光物質 | P22、YAG | |
蛍光板寸法 | 最大60X80mm | |
TVカメラ | 高精細:1125-line HARPカメラ 高感度:スロースキャン冷却CCDカメラ ビデオ記録:NTSCモードHARPカメラ |
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遠隔観察装置 | 操作システム | 遠隔観察用操作卓 |
制御システム | 主制御ワークステーションと分散処理演算機構 | |
モニタシステム | X線、酸欠、ビーム位置、試料ホルダー |
物質・生命科学超高圧電子顕微鏡の最大の特徴は、用いる電子線の高い透過能のために、厚さ数マイクロメートルに及ぶ厚膜試料を高い空間分解能で観察できることであり、この特長を活かして、デバイスから細胞にまでいたる広範な対象物の微細構造を解析する研究、特にその立体構造をナノメートルやピコメートルの尺度にまで立ち入って解明する研究に絶大な威力を発揮する。
付属の電子直接検出型高速カメラを活用することによって、物質内部の極微構造変化をマイクロ秒の時間分解能で「その場観察」できるために、レーザー光などのような量子ビームと物質の相互作用の極微プロセスをすぐれた時間・空間分解能で解明することが可能となる。さらに、細胞など生体試料においては、低温で極めて安定に稼働する試料ステージを搭載していることから、高速カメラと併用することによって、電子線損傷を極限まで抑えた条件下で、より天然に近い状態で観察することが可能となる。
高電圧発生装置、 電子銃と加速管 |
高電圧タンク | 2タンク方式(C-W回路部と電子銃及び33段加速管部は分離収納) | |
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標準加速電圧(kV) | 1000, 800 | ||
加速電圧可変ステップ | 1kVステップ | ||
使用フィラメント | LaB6 | ||
エネルギーシフト | 最大3000 V(0.2 Vステップ) | ||
電圧安定度 | 8×10-7/分以下(1000 kV) | ||
高電圧リップル電圧 | 4×10-7以下(1000 kV) | ||
最大ビーム電流 | 10 μA(1000 kV) | ||
高電圧絶縁ガス | SF6ガス絶縁 0.4 MPa(ゲージ圧) | ||
結像レンズ系、分解能、観察モード | TEM分解能(室温) | 点分解能 0.16 nm(1000 kV) 格子分解能 0.10 nm(1000 kV)(JEOL標準ホルダー使用) |
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対物レンズ電流安定度 | 5×10-7/分 以下 | ||
倍率/回折像(ステップ数) | |||
低倍率モード | ×200~1,500 (9) | ||
倍率モード | ×2,000~1,200 k (30) | ||
制限視野倍率モード | ×20 k~600 k (10) | ||
制限視野回折モード | ≦ 10.0 nm・mm (10) | ||
回折表示 | λ・L(nm・mm) | ||
低温試料室 | 試料温度 | 100K以下 | |
クライオ試料導入機構 | 100K以下 | ||
像観察装置 (デジタルカメラ) | モニターCCDカメラ | ||
1 k 広視野CCDカメラ | |||
2 k CCDカメラ | |||
4 k 電子直接検出型高速カメラ |