ご挨拶

センター長 桑畑 進

 大阪大学超高圧電子顕微鏡センターのホームページにお立ち寄り下さり、誠にありがとうございます。2022年5月1日にセンター長を拝命いたしました桑畑でございます。1970年に開催された大阪万国博覧会(EXPO’70)を見て理工学系の研究者になることに憧れ、その数年後に、大阪大学に完成した最新鋭の電子顕微鏡により、世界に先駆けて金属原子の動きを精密に観察できたというニュースを新聞で読み、地元にある大学に世界に誇れる最先端技術があることに感銘を受けました。今となっては確かめようがありませんが、「沿革・年譜」のページから想像するに、本センターの最初の超高圧電顕での成果であったのでしょう。このことは、現在も明確に記憶しているくらいに強烈な印象を与え、大学受験時にも大きく影響しました。そのような、幼少の頃に自分の人生設計に大きなインパクトを与えた本センターに所属する機会が得られたことを、光栄に存じております。

 電子顕微鏡の昨今の技術進歩は凄まじく、分子・原子レベルの観察が可能であるだけでなく、観察している試料の化学分析の解像度も飛躍的に向上してきました。まさに「百聞は一見に如かず」を自然科学に提供しているのが電子顕微鏡技術であり、無機および有機材料の極微領域の構成元素と構造に関する情報を非常に精密かつ正確に得られるようになりました。しかし、「木を見て森を見ず」のことわざのごとく、観察した微小領域と構造体全体との関係が議論の対象になる事がしばしばあります。本センターの名前となっている超高圧電子顕微鏡は、世界最高加速電圧の300万ボルトにより、「広い範囲を高解像度で観る」ことが可能なユニークな電子顕微鏡です。この特徴的な電子顕微鏡と各種周辺装置とを組み合わせることにより、真の姿を顕現させる研究を推進しております。そして、超高圧電子顕微鏡に加えて種々の電子顕微鏡も現有しており、それらの装置およびそれぞれの周辺機器についても、最高性能を発揮させるための技術革新を追求することにより、材料科学や医学生物学の発展に大いに資する研究を遂行するとともに、それらを通した科学人材の育成が本センターのミッションであります。

 本センターには、材料科学研究分野、生命科学研究分野、電子顕微鏡理論研究分野の3つの分野でそれぞれ最先端の研究と教育を行っております。加えて、共同研究・研究支援活動も積極的に行っており、学内外の研究を支援しております。これまでに、主として3つの事業、すなわち「超顕微科学研究拠点事業」(2016年4月~2022年3月)、「微細構造解析プラットフォーム」(2012年4月~2022年3月)、「先端バイオイメージング支援プラットフォーム」(2016年4月~2022年3月)によって、物質・材料科学ならびに医学生物学における電子顕微鏡と周辺技術による学理の探索と人材育成を行ってきており、あらゆる科学分野において本センターが支援できる範囲を拡張するとともに、技術の高度化を追求してまいりました。それらを通じ、本センターの装置を利用した共同研究の申請方法等を整備いたしました。個々の計測につきましては、本センターの教職員による十分なヒアリングによって、最適な計測器の選択と計測条件を提案し、それを基に観測と計測を行って頂けるようにいたしました。

 他に類を見ない本センター独自の設備をフルに利用し、自然科学の研究をけん引することで国際的な中核拠点としての役割を果たしていくとともに、先端技術をベースとした若手研究者や学生の育成を行う活動を、今後も活発に続けていく所存でありますので、引き続き皆様の温かいご支援とご指導、ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。